デンマーク テキスタイルプリントのパイオニア

Marie Gudme Leth -en pioneer i dansk stoftryk
マリエ・グルメ・レット – デンマーク テキスタイルプリントのパイオニア

マリエ・グルメ・レット(Marie Gudme Leth1895-1997)は、1930年代以降のデンマークにテキスタイルデザインを復活させたパイオニアのひとりと言われています。当時、プリント生地がデンマークで生産されることはめったになく、ドイツ、フランス、イギリスからの安価な輸入品が当たり前の時代だったと言います。

MGLは、1895年、ユトランド半島の町オーフスに生まれ、コペンハーゲンの製図・美術工業女子専門学校装飾科卒業。デンマーク王立芸術アカデミーで学ぶ傍ら、デンマーク装飾美術館(現在のDesignmuseum Denmark)で働きました。
1921年から3年間、当地の伝統的なろうけつ染めとプリントバティックに興味を持ち、妹とともにインドルシア ジャワに渡りました。
1930年には、ドイツフランクフルトのKunstgewerbeschule (装飾芸術学校) で学び、テキスタイルプリントの技術習得に励みましたが、翌年コペンハーゲンに新設された工芸学校布捺染クラスの教師へという申し出を受けデンマークの首都に戻り、併せてテキスタイルデザイナーとしての活動も本格化させました。

MGLの作品は、3つの時期ごとに特徴があると言われています。
○初期の作品はブロック技法で制作され、ほとんどが単色または少数の彩色で、プレーンな生地にアイコンモチーフを整然と配したデザインが主流です。 Urskov (Jungle)、Mexico、Kameleon (Chameleon) などの初期のパターンのいくつかは、ジャワ滞在時の影響によるものだといいます。
○1930 年代後半以降、自らのスタジオを立ち上げ、技法はシルクスクリーン印刷に変わり、リピートされたパターンによる構成が中心となりました。この技法は、多色刷りや、より大きな生地面に複雑なデザインを可能にしていきました。1940 年代までに、デザインと配色はより洗練され、植物や動物のモチーフがあふれていきました。Markblomster(Fieldflowers)、Perlehøne(本書表紙画)など。
○1950年前後から図案は次第に具象性を脱し、モザイクパターン、幾何学的なデザインに移行していきます。色調も次第に濃度を深くし、時にはビビッドなデザインの図案も制作していきます。これらは古代のモザイクがあるイタリア (ラヴェンナ) と近東への旅行が、急進的なスタイルの変化をもたらしたといいます。Mariatti、Beirut など。

本書では、これらのテキスタイルデザインが紙面一杯に構成されており、十分に見応えのある内容となっています。MGLのデザインは、深い印象ともに既視感や懐かしさを感じさせます。北欧フィンランドの作家やスウェーデンの作家たちの誰とも似ていない独自性を備えていて、見る者を引きつけてやみません。
1997年、102歳でこの世を去りました。