ミッドセンチュリーを独創的な世界感とともに描いた陶芸作家Birger Kaipiainen(ビルゲル・カイピアイネン1915 – 1988)。フィンランドデザインの最盛期と言われた1950年代、中心的役割を担うアーティストとしてアラビア製陶所を拠点に数々の話題作を世に出しました。
蔓草花や蝶をモチーフにした艶やかな装飾絵皿の数々、人物や鳥を昇華させた独特のオブジェなど印象的な作品は、東カレリアで過ごした幼少期の、湖水周辺の豊かな緑と花々そして野鳥の飛び交う風景の記憶が原点になったと言います。
アラビア製陶所入社後、イタリアミラノへの交換留学。モザイクで有名なビザンチン様式、ルネッサンス美術を遺憾なく吸収し作風は洗練されて行きました。
1960年、ミラノトリエンナーレに出品された彫刻作品Helmilintu(ヘルミリントゥ、真珠の鳥)でグランプリを射止め、以来、カイピアイネンの作品は世界を魅了することとなりました。
今から11年前になりますが、生誕100年を目前に2013年6月〜2014年12月、エスポー現代美術館(EMMA)で大規模な回顧展が開催されました。本書はその際の図録となります。
本書の紫ベロア調の装丁や見返しのヴィオラのモチーフは、カイピアイネン最愛の妻であったMaggi Halonen(マギー・ハロネン1918-1966)への思慕と祈りの表現であるとか。二人は、マリメッコ創業者Armi Ratia(アルミ・ラティア1912-1979)を介して知り合いましたが、結婚生活は8年という短いものだったといいます。以後、ヴィオラはカイピアイネンにとって重要なモチーフとなりました。
カイピアイネンは、日本でもおなじみのアラビア社の食器paratiisiシリーズ(パラティッシ、楽園)の作者でもあります。