ポール・ケアホルム

POUL KJÆRHOLM ポール・ケアホルム

デンマークの家具デザイナー、ポール・ケアホルム(Poul Kjærholm 1929-1980)。
今も人気の「PKシリーズ」を始めとする数多くの名作チェアを残しているが、当時、ソリッド・ウッドを主材とする多くの家具デザイナーに対し、ケアホルムはスチールという工業製品を採用するなど、デンマークデザインの新しい時代を切り開いたのである。

1950年、21歳でハンス・ウェグナー事務所に勤務する傍らコペンハーゲン芸術工芸学校夜間部に学び、卒業後はフリッツ・ハンセン社に勤務。アルネ・ヤコブセンの「アリンコチェア(Ant Chair)」「セブンチェア(Seven Chair)」生産で活況を呈していたデンマーク家具の激動期に身を浸しながら、独自のデザイン世界を構築していった。
1976年には、王立芸術アカデミー家具科教授3代目に就任。コーア・クリント(Kaare Klint 1888〜1954)の家具研究を推進した。直接の師弟関係はなかったものの、デンマークモダンの創始者であるクリントのリ・デザインのプロセスには強い影響を受けていた。

本書は1999年に刊行された氏の作品集である。ケアホルムの生涯と作品を、第一線の家具専門家や建築家が執筆、数々の美しい家具写真で構成されている。

特筆すべきは、妻ハンナ・ケアホルム(Hanne Kjærholm 1930-2009)設計の自邸である。ルイジアナ美術館にほど近い海沿いの住宅地に建ち、空間の自由度と際立つ開放感を実現させるため柱と長い梁を主軸とする工法によるフラットルーフ住宅である。室内には、重心の低いケアホルムの家具が配置され、一層伸びやかな空間を描きだしている。
序文は、デンマークの建築家ヨーン・ウッツソン(Jørn Utzon 1918-2008)が寄稿。巻末には、1948-1980年までの作品リスト収録。