タンペラ社のダマスク織り

PELLAVALIINA リネン・テキスタイル
TAMPELLAN DAMASTI 1859-1977 タンペラ社のダマスク織り1857〜1977

リネンのダマスク織りは、滑らかで艶があり、かつては社交のテーブルクロスとして珍重されました。控えめなテキスタイルパターンですが、キャンドルの光によって、その美しく織り込まれた模様が浮かび上がり、上質で華やかな雰囲気を盛りたてました。

本書は、二人の研究者によってまとめられたタンペラ社が生産したリネン・ダマスク織りに関する資料的一冊です。(2018年刊)
フィンランド第二の都市タンペレ(Tampere)は、南北2つの湖の水位差を利用した水力発電により、19世紀半ばから重工業都市として繁栄しました。1856年、機械工場に隣接して亜麻紡績(リネン)工場が併設され、1861年Tampereen Pellava ja Rauta-teollisuus Oy(タンペレ亜麻紡績・鉄鋼業株式会社)として総合企業が設立されました。その後、社名Oy Tampella Abとなったのは1961年頃のこと。1990年代バブル崩壊の影響を受けて倒産しました。
19世紀当時、フィンランド国内にテキスタイルデザインの専門教育機関はなく、タンペラ社は国内外の芸術家を起用し、ダマスク織りのパターンデザインを開発しました。初めはアールヌーボー様式の影響を受けた自然モチーフのものが多く、1917年のフィンランド独立へ向け、機運が高まるフィンランド・ナショナリズムがダマスク織りにも現れ始めました。

ダマスク織りの新時代を切り開いたのは、なんと言ってもDora Jung(ドラ・ヤング1906〜1980)でした。1929年、中央芸術工芸学校(Taideteollisuuskeskuskoulu/現アアルト大学)に繊維部門が開設されるとともに入学。1932年卒業と同時に、自身のアトリエDora Jung Textilを設立。戦後1951年、54年、57年とミラノトリエンナーレで立て続けにグランプリを受賞。氏のリネン・ダマスク織りが国際的な注目を集めました。伝統的なダマスク織りの模様を北欧モダンの世界に組み替えていったのです。タンペラ社との協業は1937年〜1977年までの40年に及び、タンペラ社の歴史とともにテキスタイルデザイナーとしての人生を歩みました。


本書には、Dora Jungを始めとする作家作品群が美しい写真で掲載されており、また最終章には、タンペラ社リネン・ダマスク織りの歴史120年間に生産された895点がモデル順に整理掲載されています。