「長くつ下のピッピ」「やかまし村の子どもたち」「名探偵カッレくん」など、世界中で愛される数々の物語を生み出したスウェーデンの作家 Astrid Lindgren(アストリッド・リンドグレーン)。彼女は、自作『やかまし村の子どもたち』の映画版(1986年公開)のために歌をつくりました。それがこの Alla ska sova です。映画の中では、干し草小屋で一夜を過ごす3人の少女たちによって優しく美しく子守歌として歌われています。
2002年、リンドグレーンは94歳で他界されましたが、国をあげての葬儀に際してもこの子守歌が流され、弔問に訪れた絵本画家 Marit Törnqvist(マリット・テルンクヴィスト1964年〜)は、この歌詞に基づいた絵本の制作を思い立ちました。
本書は17年の歳月を経て2019年4月に出版され、同年、絵本の原画展やリンドグレーンの子守歌の演奏など様々なイベントが開催されました。
描かれているのは、真夏の白夜の風景。この時期は夜8〜9時頃にやっとお日様は沈みます。白夜の日没間際のあかね色の空やその光を映した湖水地方の風景は、平和で心安らかな、スウェーデン人にとっての「心の故郷」と重なり、リンドグレーンへのオマージュとなっています。
日没とともに一匹の黒猫が家を出て、牧場を通り、近くの湖水を眺め、森を抜け、宵闇とともに家に戻り、男の子のベッドに潜り込んで眠るという物語です。