集合住宅の建築とリペア

Byggnadsvård för lägenheter 1880-1980

ヨーロッパの都市部には、19世紀以前に建てられた年代ものの集合住宅が数多くあり、居住者は石造りの外観をそのままに、内装を上手にリペアしながら快適な暮らしを維持している。
本書は、スウェーデン ストックホルム市街地を中心に、1880年以前に遡り、それぞれの時代ごと集合住宅の建築様式や特徴について写真とイラストで解説している。


例えば、1890〜1910年代はアール・ヌーボー、アール・デコ様式。1930年以降はモダニズムの流れを汲むデザインへ。1970年は現代的な構成へ。最後の章では時代を経た集合住宅のリペア事例も紹介。
本書の趣旨としては、集合住宅のクロニクルという建築資料的な側面とともに、それぞれの時代のデザインに対応したリペアメソッドを体系的に整理することに主眼を置いているとも言えるだろう。

時代の変遷を経た集合住宅には、それぞれの時代に刻まれてきた美しい珠玉の要素が散りばめられており、それらを毀損することなく、さらに新しい価値を効果的に採り入れることで、その豊かな居住環境は次の時代へ手渡される。集合住宅が備えたふくよかさを未来へ繋ぐ価値継承のマニュアルとして、本書は体系化されたものだ。それは魅力的な表紙や紙面のエディトリアルデザインからも伝わってくる。