家内手工芸とテキスタイルアートの100年

LILLI & PRINSEN リリィと王子
100ÅR AV HEMSLÖJD OCH TEXTIL KONST

19世紀後半、スウェーデン各地の農村で手工芸を営んでいた生産者は、近代工業化の勢いに押されるようにして困窮を極めていきました。その状況を見かねて、生産者の販売を支援する手工芸運動も活発化し、なかでも1899年に設立された「Föreningen för Svensk Hemslöjd(スウェーデン手工芸協会)」は、伝統的な手工芸生産者の生活を支えることに貢献しました。その中心的な役割を果たしたのがテキスタイル・アーティストのリリィ(Lilli Zickermanリリィ・シッカーマン1858-1949)と、彼女を支え続けた王子(Prins Eugen Napoleon Nikolausエウシェン王子1865-1947)でした。

リリィは、1910年〜1932年にかけてスウェーデン全土を歩き、各地の手工芸によるテキスタイル製品を調査し、伝統的なデザインの目録を完成させました。
二人の献身的な活動によって、伝統的なテキスタイルデザインは、時代の変革期を経ても毀損されることなく、現代に至るスウェーデッシュ・モダンの中に継承されていったと言ってもいいでしょう。

本書は、スウェーデン手工芸協会連合会(Hemslöjdsföreningarnas Riksförbund)創設100周年を記念して2002年に開催された企画展の図録です。会場は、ストックホルム、ユールゴーデンにある王子の邸宅を美術館にしたプリンス・エウシェン・ヴァルデマシュウッデ美術館(Prins Eugens Waldemarsudde)。
伝統とモダン、その両方のデザインを対比して眺めることもできる美しい一冊です。
なお、リリィによる目録の内容は1937年出版の「Sveriges Folkliga Textilkonst (Swedish Folk Textile Arts)」にまとめられ、コレクションは現在「ZICKERMAN COLLECTION」としてKONSTFACK〈University of Arts, Crafts and Design〉に収蔵されています。